2012/04/26

ザ・ケネウィックマン・エクスペディション、25日目



三時間だけ仮眠して真夜中の十二時に起きた。出発準備を終えると、夜明け前の午前四時半に、ウェアハウスビーチからヘッドライトの細い光だけを頼りに暗闇のコロンビア川へと漕ぎ出す。微かに岸や島の影だけが宙に浮かんで見えていた。



川の上で夜明けを迎えた。大気は鎮まり返って風は吹かず、まだ眠りから醒めぬ大地は物音一つ立てず、水面は揺らぐことなく空を映す鏡だ。世界をきっかり二分する空と水を曙色に染めながら、朝日はゆっくりと姿を現し、時だけが流れていることを知らせる。水に浮かぶ小さなカヤックの上で、太陽が昇る瞬間を体験すれば、心は翼を纏う。



行く手を阻む長大なマクナリダムを迂回するために、ボート進水斜路から上陸した。陸上でカヤックを移動するために、単純な構造の二輪カートを二つカヤックの底にベルトで縛り付ける。カヤックを押して転がし、ダム下流に向かってまずは急坂を登り始めた。

荷物を含めたカヤックの重量は、百二十キログラムほどだろうか。水から上げてしまえば、陸に打ち上げられた鯨のように、その優雅な泳ぎはもう見られない。二輪カートを真っ直ぐに縛り付けることが出来ないので、カヤックは直進できず弧を描き、すぐに道から外れてしまう。二十メートル進んでは、カヤックの先端を渾身の力で持ち上げ、横にずらし方向修正する。丘を上がる砂利道では、上り坂というだけでなく、細くて小さな車輪が深砂利にめり込むので、全身の力を振り絞ってカヤックを押しても容易には転がってくれない。

気持ち悪くなる程に疲れ体力の限界を感じたので、砂利道脇の何一つない広漠な草地だが、テントを張ることにした。まだ日は沈んでいないが、深夜十二時から活動し始めたから、十五時間休むことなく動き続けていたことになる。