シアトル空港でレンタカーを四日間、躊躇する余地なく七百九十ドルで借りた。
初めての右側通行に戸惑い、信号ルールが分からず後続車からクラクションを浴び、時差ボケで睡魔に襲われながら、一人車を北へと走らせた。休みなく続けた遠征の準備で、体には疲れが溜まっていた。しかし、そんな緊張と疲労を吹き飛ばすように、右手に連なるカスケード山脈を白く覆う雪は、僕の心を踊らせ、カナダへといざなう。国境を越え、昨夜バンクーバーに辿り着いた。
朝八時、注文したカヤックを受け取るため、製造元のフェザークラフトを訪ねた。
創業者のダグ、メールを交わしたテレサ、そして従業員の皆が、満面の笑みで迎え入れてくれた。ダグが、「あの計画の君か。会いたかった」と、相好を崩してくれた。
また幸運なことに、日本でカヤック店を営む大瀬さんが、たまたま滞在していた。有難いことに、丸々一日かけて、日本語で、カヤックの複雑な分解組立手順を説明してくれた。
見知らぬ海外で、未知の冒険を行う。経験と想像の範囲を超えている。興奮と不安が、大きく漠然と広がっている。そんなテンションが強く張った神経を、客として以上に暖かく熱心に接してくれる皆の気持ちが、解きほぐしてくれた。