マクナリダムは横一列に並ぶ水門を全て開き、大量の雪解け水を放水していた。二三十メートルもの高さから落下した水があたり一面を埋め尽くす唸りをあげ、水煙はダムより高く舞い上がり、川面では波が荒れ狂っていた。十一日前にフィルと下見に来た時には、水門は三分の一しか開かれていなかったのだが、水量が増したらしい。
ダム下流にあるボート進水斜路まで下見に行ってみた。流木が散乱し、長いこと使われていないのが分かる。十センチメートルほどの岩で覆われた浜は、不規則に動く一・五メートルほどの大波が打ち寄せており、さらに水位が上昇したためほとんど水面下に沈んでいてカヤックを置き出艇する場所が無くなっていた……
深く悩んだすえに、苦渋の決断をする……人力だけを使ってダムを迂回するのは不可能だと判断し、テントを張った公園で一昨日出会った地元のポールに電話をかけてみると、カヤックの移動を手伝ってくれると快く答えてくれた。ここより下流で待ち構えている残り三つのダムは、作られた年代がさらに古くてカヤックの迂回はなおさらに難しいはずであり、前途多難であった……
ポールとロバートとロブからサポートを受け、ダムに一番近いボート進水斜路がある公園までカヤックを車で運ぶことができた。公園内にテントを張り終えると、彼らの家に招かれ、シャワーと夕食をご馳走になる。
翌日には、僕の新聞記事を読んだマークがテントを訪ねてきて、彼の家に招かれ夕食をご馳走になった。