2012/05/08

ザ・ケネウィックマン・エクスペディション、37日目


キャリーに見送られながら、カヤックをコロンビア川へと漕ぎ出した。ジョンデイダムのすぐ下流では、水の流れが速くて時速八キロメートルほど出ているので、帆は風を受けていないがカヤックはどんどん流されて行く。

フッド山が、日を追うごとにはっきりと、行く手に見えるようになってきた。オレゴン州で最高峰の、コロンビア川脇にそびえる活火山だ。まだまだ遠く離れていて小さくしか見えないが、赤茶けた渓谷に囲まれた川の上から眺めれば、一面雪に覆われ白く映えたその姿は、ひときわ目を引きとても美しい。



漕ぎ始めてから一時間ほど経過すると、幸運にも東から追風が吹いてきた。帆が追風をはらみ、水の流れも後押しをして、カヤックは力強く水を切りながら時速十キロメートルほどの速度で進んで行く。

浸食で削り出された、薄い壁状の奇妙な形をした岩が、川の中央に立ち並んで島となっていた。さんさんと降り注ぐ陽光が、垂直に切り立った岩肌の凹凸をより浮き上がらせて、目を奪う奇景が水の上に広がっていた。



追風を受け予想外の早さで、午後三時にダラスダム手前のエイブリィ公園に到着した。三時間半しかかからずに二十五キロメートルを移動できた。

そしてキャンピングカーで並走してきたキャリーが、ダラスダムの迂回をまたもやサポートしてくれた。キャリーとの間には深い絆が生まれていた。今夜も共に野営している。