カヌーを漕いでいる道すがら、狸に出会った。川岸の獣道を二匹で連れ立って歩いている。一昨日一昨々日の狸とは明らかに違う狸だ。
水流にカヌーが流されてしまわぬよう岸に生えたアシを掴んでイカリの代わりとし、狸とは反対の岸に停泊してその様子を眺めていたが、こちらに気づく様子もないので、思い切って狸のいる側の岸へとカヌーを漕ぎ進めてみた。カヌーが川の中央にさしかかった頃、一匹は僕を発見し、怪しいやつが近づいてくるぞと相棒に伝えもせずに、つれなくもと来た道を引き返していった。もう一匹はいっこうこちらに気づく様子もない。
カヌーは地面よりも低い川に浮いていて、僕はそのカヌーに座っている。だから僕の視線はとても低く、ちょうど岸の上にいる狸の視線と同じ高さだ。また岸の土壁は垂直に切り立っているので、カヌーは岸壁に接岸する船のように、岸にぴったりと横付けされる。狸は川沿いぎりぎりの場所にいる。だからどんどんと僕の顔は狸に近づき、とうとう狸のまさに目の前、僕の目と狸の目との間が五十センチの所まで接近してしまった。それでもしばらく狸は気づかないのである!
やはり狸は間が抜けている。
民謡に描かれている狸のイメージは正しいのであった。
さらにその十分後、こんどは狐に出会った。うむ、まるで日本昔話の中にいるようだ。夢かうつつか分からなくなってきた。
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