昨夜は親友である健太郎の自宅に招かれて、札幌一と評判の高い寿司をご馳走になる。久しぶりに食べる大好物の寿司が舌の上でとろけた。
健太郎との運命の出会いの場所はベカンベウシ川だった。川の神に導かれた、としかいいようがない。当時の彼は大学院でベカンベウシ川に生息するイトウの研究をしていた。フィールド調査では、誰もカヌーなどすることがない倒木だらけの中流と上流にカヌーを浮かべて、イトウに埋め込んだ発信器を追っていた。僕は僕で原始の川を求めて、誰もカヌーなどすることのないこの川に、やはりカヌーを浮かべていた。そんな二人が出くわしたのだ。意気投合しないわけがない。
二人ともなにか世間とは少し異なる世界を生きていて、大陸を離れそれぞれ別の海を航海していたが、久しぶりに同じ港に船を停泊させ、今まで見てきた海や島の話を熱く語り合った。昨夜はそんな表現があっていたように思う。
森の中は静かだ。ときたま動物が枯れ枝を折る音が響くだけである。とても明日になれば台風の強風が吹き荒れるなどとは思えない。
昔の人は、目を持ち渦を巻く風の固まりが熱帯地方で発生し日本へと北上してきたことなど、知る由もない。何かの理由で空が突然お怒りになり牙をむいた、と思うしかなかったに違いない。いつなんどきお怒りになるか分からぬので、常に自然に深く耳を傾け、注意深く観察していたことだろう。
そう、この世は生き生きとした味のある世界なのだ。
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