おくのおくの細道からようやく抜けて、おくの細道に入った。いま平泉にいる。
芭蕉が「秀衡が跡は田野となりて、金鶏山のみ形をのこす」と記した金鶏山の、中腹
にあるキャンプ場にテントを張っている。
公認の寝床につけたのは、北海道札幌の北東にある鶴沼以来か。いささか気が楽であ
る。あとは皆ゲリラキャンプであり、悲しきかな当世は我が足による旅など出来ぬよ
うになっているのである。しかしながらも古人の心をより近くに知りたければ、歩く
という行為を実践して、国土にたいする感覚、旅にたいする感覚を身につけ、その演
算子を持って文字を追う以外にあるまい。
あいにくの雨が昨夜から降り続き、今日は雨がやむのをテントの中で待つことにし
た。花巻、北上、平泉と雨がよく降り、週の半分近くを歩けずにいる。雨風止むのを
心静かに待つのもまた人の旅である。
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