両足の指の痛みが取れない。軽い一度弱の凍傷だろう。子供がちょっと手を出して痛い経験をする、限度を見極めるためのいい学習になったと思っている。
どかた用の厚手の靴下を履いていたが、それでは氷点下五度(これはたまたま見たときに温度計がさしていた温度だが、実際の最低気温はどれほどであったのだろうか。データを取るために冬山で使えるような最低気温計を見つけたい)では役不足であった。今回は装備を切り詰めて代わりに三週間分の食料を運ぶという試みをしていたので、寝袋はダウン量が少ない方を、白金カイロは持って行かなかった(寝袋の中で臭う、その臭いのもとである揮発成分が身体に良いとはあまり思えない、発熱する際に水分を出すから寝袋がそのぶん湿る、燃料のベンジンを航空機で運べない、使用済みの白金懐炉も航空機で運べないという課題を抱えているのだが)。
ダウンのソックスを高価だが買う必要がありそうだ。
それに冬山のプロに教えを請うた方がよさそうだ。カヌーであってエベレストに登るわけではないから、いままではどかた用品、カヌー用品、登山用品を混ぜて使い、高価な登山用品はなるべく避ける方向でいたのだが。
ちなみに漕いでいるときのいでたちは以下だ。
防水透湿素材の釣り用ウェーダー(胸まであるブーツ付き吊りズボン)。水産加工用の丈夫な耐寒グローブ(倒木越えの際に、倒木を折ったり引き抜いたりとかなり手荒な作業をする)。
この二つはベカンベウシ川の倒木越え仕様であって、カヌーとしても僕だけの特殊な格好だ。
スポーツ用のサングラス(倒木越えの際、しょっちゅうしなった枝に顔を打たれるので、目の保護に必要)。帽子(倒木の下を潜るときには頭を擦るし、やはり枝で打たれるのでこれも必要)。ライフジャケット。BOMBERというカヌーウェアメーカーのフリース上下(もこもことしたものではなく密度の濃いストレッチするフリース。なんと呼ぶのだろうか)。モンベルの防水透湿アウター。
発芽玄米を主食にするのはまあまあうまくいったようだ。発芽玄米は栄養がありそうだという思いこみも影響しているはずだが、マルチビタミンを飲まなくても「野菜を食べたい!」という身体の欲求は出てこなかった。アルファ米に比べて15パーセント重いだけだし、炊くのに燃料を消費するが焚き火でも焦がさずにうまく炊けたし、カヌー旅にはよいのでは。
旅の最中に文章を書く意味はまだよく分かっていないものの、現場での特殊な精神状態で書かれたものは、それが終わってから思い出して書くのとはまた違うはずだから、それなりの意味があるのだろうと思っている。まあ自然の中と人間社会の中とで、どちらを特殊なのだという議論の余地は大いにあるが。読む方も、たとえ意味を読み取るのが難しくてもそれなりに面白いのでは。あとで自分で読み返すのは怖いけれど。これも時代に合わせた試みだろう。そもそもブログやFacebook自体も試みだ。
ブログとFacebookに投稿する仕組みは(電源がない環境では通常通りにブログやFacebookにアクセスしていられない)、自作のWebサーバーにまだバグがあり、同じ内容を何回も投稿してしまうなどの問題があった。スマホから文章と写真をそのWebサーバーにメールで送ることも、携帯電話網の電波がとても弱く、また電源は電池だけという環境では課題が多かった。もっとも、さらに人里離れたカナダやアラスカでは衛星携帯電話しか使えず、高価なので手が出せないが。
ポメラというキーボード付きの文字入力デバイスは、初めて試したが、これなしでは文章を書けなかった。乾電池で動くからである。しばしばフリーズしたが(開発は他社に依頼しているので、まあ仕方がないだろう)、それでも電池を入れ直せば使える。
今回は秋のベカンベウシ川という、早春に負けず劣らず素晴らしい体験をした。さらに、二月の初旬には人が歩けるほどに川が完全凍結するので(ここのところの異常気象で毎年どうなるかは予想がつきにくいが)、クロスカントリースキーを履いて凍り付いた湿原の川を歩くのも素晴らしいはずだ。