2019/07/23

アフリカの砂漠をラクダ1頭従えて


 いつも乗っている電車が走っている。電気の力で。当たり前のように。

 ところがその当たり前が、よく観察してみれば、人間の想像の及ばない宇宙の畏怖だ。

 数百キロメートルも離れた発電所が生み出した、1,000人も乗った箱を時速100キロメートルもの速度で動かす化け物のようなエネルギーが、どういう訳か架線という細いワイヤーを通り抜けて、まばたきも終わらない瞬間に電車へと移動している。実感しがたいはずだ。

 皆が当たり前のように毎日、何処であっても使っているスマホもそうだ。電線は繋がっていないのに、なぜ。私たちの頭の上、手のひらの上、体の中、ありとあらゆる所に存在するが目には見えない、電場と磁場という空間を埋め尽くしている何か。触れられず、想像すら難しく、得体が知れないがどうやら実体であるそいつらが、振動しながら携帯電話基地局から言葉を、映像を送ってくるらしい。やはり実感できないはずだ。

 いつどこにいても、世界はじつは宇宙の畏怖で溢れかえっているようだが、どうやら麻痺してしまった僕らは気付かずにいる。

 アフリカの砂漠をラクダ1頭従えて、砂丘を乗り越え、砂でパンを焼き、凍った夜に星を眺めれば、宇宙の畏怖を体の奥で深く実感できるかもしれない。詩人管啓次郎と、物を言わず、歩いてみたい。


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