2015/09/15

高麗川から海へ その65

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 シュークリームの雲浮かぶ。

 秋ヶ瀬堰を超えたのでここはすでに汽水域。大潮の時には水位が1メートル上がるそうだ。堰がなければさらに上流まで潮の影響があるということか。随分と広大な湿原領域に人々は住んでいるのだな。
 汽水域らしく、海から遡上してきたのだろう。レジャーボートが係留されている。

 出かけに80歳の釣り人と話しをした。昔の荒川の様子はどうでしたかと尋ねようかと思って、ふと気づく。荒川が入間川へと付け替えられたのは今から約300年前。この人のおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさんの話しだ。凄いな。なんという人間と荒川の歴史だ。

 巨大な水門を見上げる。すげーな。人間の工学は。

 陽光に照らされたシダレ柳が、青空と白い雲によく似合う。

おおよその積算距離[Km]: 54

2015/09/14

高麗川から海へ その64

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 狸ではなく蛇に化かされていたようだ。泳ぐ蛇を夢中になって追いかけ、何度も何度も川の中央でぐるぐると回り、そして上流と下流を見失った。蛇は神の使わしめだったか。そういえば、パドルの上にのってくる動物は初めてだ。

 宝石のようなブルーの背をしたカワセミが、ツィー、ツィーと鳴きながら、水面上十センチの低空飛行で疾風のように通り抜けた。こんな大都会の真ん中でお目にかかれるとは、思いもしていなかった。さらに努力して綺麗な水と魚が住める周辺環境を整えれば、愛らしいカワセミが都心でも人々の心を癒してくれるだろう。河川敷はゴルフ場だらけだが、おそらく国の土地だと思うけど、金儲けに走らずに、草木鳥獣虫魚のために解放したらどうだろうか。自然は増水して土を被っても、ゴルフ場のようにお金をかけて掃除をしなくてもよいしね。

 土手で周囲と区切られた川からの視点では、住宅や工場などがまったく見られない。そのような場所で三日も過ごすと、奇妙な錯覚に陥ってくる。都心部にいるはずなのだが、まるで人間の世界から切り離されたようで、後ろ足で立つ毛のない動物が、何頭も何頭も、へらブナを釣るといって棒を熱心に川へと突き出しているのが、おかしくて微笑ましい。

 今日は日没前一時間半の時間切れで、秋ヶ瀬堰の脇の草地にテントを張った。

おおよその積算距離[Km]: 47

高麗川から海へ その63

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 どうして今日は全く進まないのだろう、昨日の狸に化かされているのだろうかと、気味の悪い思いをしていたら、なんと休憩したのち間違えて上流に向かって漕いでいた……目が点である。昨日のキャンプ地点から4キロメートル下流の場所まで漕ぎ戻っていた!水が全く流れていないのと、両岸が永遠と続くゴルフ場で木立以外は何も見えないので、全く気付かないでいたのだ。

おおよその積算距離[Km]: 47

高麗川から海へ その62

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 なぜ、こちら側にも広大な大地があるのに、危険を承知であちら側の大地に渡ろうと思ったのだろう?彼女を誘う冒険心はなに?
 美しい色彩のうろこに覆われた体は、水に濡れ陽光に輝きいっそう艶やかで、体をくねらして泳ぐその姿は、色気を放って見るものの目を奪う。
 水上に浮かぶ僕のカヌーに上がろうとしているようだ。僕を小惑星へと誘ってくれるのだろうか。

おおよその積算距離[Km]: 44

高麗川から海へ その61

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 風が川筋を通り抜ける。眼前に広がる水面にさざ波が立つ。陽光が反射する。光りの粒子が瞬間の強い輝きを放ち、すぐさま消滅する。無数の生滅する光りの粒子が、視界一面に広がる。固定されていた空間認識がずれて、次元の異なる空間にいっとき溶け込む。どちらの空間認識が正しいのか、答は意味をなさない。

 白煙をあげて唸るエンジンポンプで川の水を汲み上げ、 増水して河川敷のゴルフ場に積もった土を、再び川に流しこんでいる。土はやがて東京湾に流れ込み、海底に沈んだ旧東京川を流れ、やがて日本海溝に流れ着き堆積する。旅はそこで終わらずに、マグマに引き込まれ、循環したのち火口から真っ赤に燃えて吹き出して、また大地へと戻ってくるのだ。

 岸辺に生える柳の木陰で、我、宇宙と惑星を思う。

おおよその積算距離[Km]: 42

2015/09/13

高麗川から海へ その60

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 今夜の夕焼け以上に美しい芸術作品があるのだろうか…… 茜色に染まった雲と水は 、一枚の絵としても超えられぬ美しさであり、また流れるように姿を変えるその一瞬一瞬が、はかなき者の美を見せつける。

 狸がテントの前を通り過ぎた。獣道をまたいでテントを張っているらしい。今夜は狸が友達だ。心安らぐね。

 古くなったカヌーの接着剤が劣化して水が漏れてくる場所を発見し、ダクトテープで覆ったところ、浸水が止まってくれた。問題を解決し壁を乗り越える、こんなに楽しいゲームはないね。

おおよその積算距離[Km]: 37

高麗川から海へ その59

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 とうとう荒川に合流した!
 しかし本当は、江戸時代に人間が流れを変えることで、荒川が合流してきたのである。なんたる人間の知能とパワー。合流して五十メートル程にも広がった広い川を眺めていると、人間が自然に挑んできた歴史のフィルムが再上映されているようだ。

 へらブナ釣りとブラックバス釣りの人達を何人も見かける。今朝から数えて十人は見ているか。
ゴルフ場を繋ぐ渡し船もエンジンの唸りをあげて、川が賑わいを見せてきた。

おおよその積算距離[Km]: 32