Saturday, October 24, 2015

猛烈な風


 空が唸りを上げている。猛烈な風が吹き荒れている。昨夜から吹き始め、太陽が昇って日の光が射すようになっても、いっこうに収まる気配がない。

 広大なアシの湿原がここから始まるという場所に、テントを張っている。アシの湿原は、完璧な水平面がどこまでも広がり、風の抵抗となるものが一切存在しない、究極の吹きさらしだ。だからことさら強い風が吹くのであろう。
 空には、どこから鳴っているのかはっきりせず方向感のない、ごく低音のおうおうおうという音が、ほとんど変化することなく轟いている。
 そして方向と距離感を伴ったごうごうごうという音が、離れた場所から聞こえ始める。そいつは風の道という形を持っている。風の道は龍のようにうねりながら、だんだんとこちらに近づいてくる。具体的な形を持っているものだから、実体をもった恐怖として襲いかかってくる。どんどん音は大きくなり、そして広がり、ついに風の道に飲み込まれると、もう地獄のような騒ぎとなる。ごうごうごうという音と、暴れるテントの壁に映し出された荒れ狂う嵐の映像が、あたり一面をぐるぐると渦巻くのだ。テントはばたばたと暴れ、ひしゃげて寝袋に覆い被さってくる。

 こんな日は丹頂鶴は森の中へと避難しているのだろうか。鳴き声は聞こえてこない。僕はテントの中でじっと待つとしよう。

 夕方になり雹が降った。
 丸一日、冷たい風が吹き荒れ、日が射し、雨が降り、雹が降る荒れた天気だった。

 日が沈み、雪が降り始めた。初雪だ。
 こんな夜は、動物達もまったく物音をたてずにじっとしている。風の音だけが渦巻いている。


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