UMIACK

2022/07/08

稀有な体験

 徒歩縦断という稀有な体験をしているのだから(素晴らしいという意味ではなく稀なという意味で)、報告するのはある意味義務に近いのだろう。いま行政に関わっている人、これから関わっていく人、未来のために解決策を考えていって欲しい。

『夏の道路の問題』

遮る緑のない太陽光を吸収し赤外線を放出するアスファルトやコンクリートの道は、まるで上下に石英ヒーターを持ったオーブントースターの中にいるようだ。もはや歩ける道ではない。森や林に接した、または日光街道のように杉を植えるなどした土の道は、驚くほどに涼しい。

道脇に流れる小川は、その周囲の冷えた空気や足や頭を冷やすことで涼を得られるささやかな清流は、どこにもない。コンクリートの排水路になってしまった。

吸水性のないアスファルトの道は、雨が降ると川となり、もはや歩ける場所ではなくなる。

『冬の道路の問題』

雪が積もると、除雪された車道と、その除雪された雪が積み上がった路側帯へと道は二分され、もはや歩ける場所ではなくなる。宮城から先へと進めなくなった。

『通年の道路の問題』

古い時期に建設された道路やトンネルや橋は、路側帯がない(ないに等しい)ところが多い。そこに大型のトラックが走っているので、もはや歩ける場所ではない。たまに道幅と同じ車幅を持つトレーラーが走ってくるが、完全に逃げ場を失い、両者向かい合って停止するか肩をかすめるしかない。

『海岸線の問題』

日本を縦断すると分かるが、消波ブロックのない浜はもうない。たまに、例えば今いる鳥取県東浜(写真の浜)のようにそれがなくじつに美しい浜があると、高級リゾート列車の停車駅となり無人駅はガラス張りの立派な建物となる。なんとも皮肉。観光名所として行政に注目され、やがて防災として消波ブロックが積み上げられ、景観は失われやがて観光客の足は遠のき、といういつものパターンを繰り返すのだろうか。解決策を悩み考え、うまくバランスをとる必要がある。人間にはそれができるのだから。

例えばアメリカのタナナという街は、ユーコン川に氷が詰まって上昇した水位が数ヶ月ものあいだ下がらないという大洪水を経験したが、人々は高床式の家を建てることで対応した。ようは人間側が自然に対応する努力をしたのである。西洋のアメリカがそうなのに、東洋の日本が力でねじ伏せようとしているのは、やはり皮肉だ。

『過疎化の問題』

すでに皆が分かっているように、交通網を日本に張り巡らせば地方も国も豊かになる、という計画はうまく機能しなかった。国土は狭く、点の集合となり、仕事を求めて都市部という点へ、余暇を求めてガイドブックの観光地という点へ集中するだけとなった。歩いてみると、有名な観光地よりも遥かに素晴らしい場所は多々あることに気づく。高速に移動する視点から、歩くという速度の遅い視点へ、一度は立ち返る必要がある。

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