2016/06/09

Black wave

Day 7, 7th Jun 2016
Wind stopped, and I could not see white-crested waves anymore. I started to paddle into the Windy Arm, which is the crossing point of a narrow long lake leading to glaciers and the lake leading to Carcross village, under dim light which I did not need a head light at PM 11:00.
It expected to be an easy way, but gradually wind and wave increased at middle of the lake.
Wind and wave were worse more and more. A shore is few miles away. It was just like a wild sea in the night.
Wind and wave came from behind and tossed about my kayak. Suddenly a big wave attacked the kayak from the back of right hand. The kayak leaned deeply to the right at just balanced angle between stableness and overturning. In my past experience, I was going to capsize in the same situation. I thought that "I am going to capsize...". I leaned the upper half of my body to the left of back. I escaped overturn by a hairsbreadth. And then the kayak leaned to the left in reaction. I struck an water surface by a paddle to stop the movement.
I did not wear neither a dry-suit nor a wet-suit.
"I am going to die in here..." I thought.
Repeatedly big wave attacked me. I was exhausted. I said to myself "concentrate, concentrate" and continued to paddle with all my power.
At AM 0:30 I stepped my foot on the solid earth again. I had fought with wind and black waves for one and half hour.
Before to take off my wet clothes, before to pitch the tent, I drunk a Yukon Gold local beer which was just leaved on the bottom of the kayak without being drunk.

 7日目 2016/6/7

 氷河へと延びる細長い湖と、カークロスという村が端にある湖とが、垂直に接続する場所を、地元の人達はウィンディー・アームと呼んでいる。そのすぐ脇にある岸にテントを張って風が止むのを待ち続けていたが、太陽が山の背後に沈みかけた頃、漕ぎ渡るチャンスが訪れた。風は止み、見渡すかぎり白波は一つも立っていなかった。テントをたたみ、荷物をカヤックに詰め込む。北緯60度なので完全な白夜にはならないが、それでも薄明るくてヘッドライトなしでも行動できる午後11時に、漕ぎだした。
 楽勝、のはずだった。それでも念を押して、セオリー通りに、風が吹き始めて流されてもかまわないようにと、進みたい方向に対して90度右手となる氷河へ向けて漕ぎ始める。そして中央にある大きな島を目指してウィンディー・アームを横切り始めた。
 進むにつれて、徐々に風と波が出始めた。だがまだ白波が立つほどではなかった。状態がよくてもこの程度の風は吹くのか、と思いながら、そのまま漕ぎ進める。
 しかし益々風と波が強くなり始めた。もう岸と島との中間ほどに来ていて、引き返しても島を目指しても、どちらでも同じような位置に来ていた。風の具合が急変して吹き始めたのか、それとも遠くの白波が目視できずにいたのか、その両方であったのか、とにかく読みが外れた。
 進みたい方向は、波と風に対して平行な方向。だが真横からくる波をカヤックに食らう分けにはいかない。しかし波と風に対して垂直であり、かつ風下の方向へと進めば、地元の人が教えてくれた情報によると、上陸できない危険な岸に打ち上げられてしまう。波と風を右手後方60度の角度から受けるような角度で、漕ぎ進めた。
 ウィンディー・アームが終わるであろう場所は、まだ遙か彼方の、おそらく10キロメートルは先にあった。上陸できない岸は、4キロメートルほど先にあった。湖のど真ん中。暗い、荒れ狂う海、そのもののようだった。
 後方から次々に押し寄せてくる波を全て把握したいが、後ろばかり見ている分けにもいかない。不意に大きな波が、右斜め後方から襲いかかってきた。カヤックが大きく右に傾いた。転覆ぎりぎりの角度、指の上で鉛筆を立てて倒れないようにバランスを取っているような不安定な状態、まで傾いた。いままでの経験では、そのまま転覆していた。「ああ、ひっくり返る」、と思った。上半身を大きく左斜め後ろに傾かせて、重心を移動し、バランスをとる。しばらくのあいだカヤックは右に傾いたままの状態で停止し、徐々に左へと戻りはじめた。なんとか横転はまぬがれた。次はその反動でカヤックが左に傾いた。パドルのブレードで激しく左手の水面を叩いて、その回転を押さえ込む。
 ドライスーツもウェットスーツも着ていない。
 「ここで死ぬのか」、と思った。
 ウィンディー・アームが終わる場所は、まだまだ遙か彼方。疲れ切っているが、「集中、集中」と声に出しながら、波と風の気配に意識を集中させ、全力で漕ぎ続けた。
 もし上陸できたら、もう冒険は止めて、マックでバイトでもしよう、と思った。
 なんどもなんども黒い大きな波に襲われる。
 氷河からくる水で凍るように冷たい湖の真ん中で転覆するよりは、カヤックがバラバラになっても岸に打ち上げられたほうが、生存確率は高いと考え、斜め後ろから波と風を受ける危ない方向から、それより少しはましである真後ろから波と風を受ける方向へと、カヤックを進める向きを変えた。岸を前に見ながら漕ぎ進む。それでもまだ、波にカヤックは大きく翻弄され続ける。
 ウィンディー・アームの終わりではなく、岸が近づいた。もう上陸するしか道はない。小石の浜を薄明かりの中で確認したので、舵を跳ね上げて上陸を試みたが、岸が近くなるほどに波は高さを増すので、この場所ではカヤックが転覆して波にもまれそうだった。再び舵を降ろし、パドルを逆に漕いでカヤックを後退させ、状態が良い場所を探す。一箇所だけ、なぜか打ち寄せる波が低い場所があった。滅多に見ることのない地形だが、小さい水たまりへと繋がっていて、うまく波のエネルギーを消している。ラッキーだった。そこにカヌーを忍び込ませた。
 堅い大地が再び踏めた。
 午前12時半をさしていた。1時間半の間、波と風にたいして、蟻ほどのちっぽけな俺は必死にあらがっていた。
 濡れた服のまま、テントも張らず、まず、まだ一度も飲まずにただカヤック内に転がしていたユーコンゴールドというこの地のビールを、飲んだ。

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