2012/05/02

ザ・ケネウィックマン・エクスペディション、31日目


前日に比べれば少し弱くなったが、それでも風に向かっては歩きにくいほどの強い西風が、快晴の空の下で一日中吹き荒れていた。風速は十一メートル毎秒ほどか。その西風が吹く方向はコロンビア川の流れと真正面から向かい合うので、水に対する風速は増して、風が生み出す波はより高くなる。

その日も移動することなく同じ場所に留まり、風が止むのを待った。

狭いテントの中に一人閉じ込められていると、計画の遅れから出発を焦る気持ちが生じてしまう。挑んでいる相手は自然である。冷静な判断力を保たなければならない。



この強い風と高い波を求めてやってきたウィンドサーファーのリチャードが、一緒に夕食をとらないかとテントまで誘いに来てくれた。セミリタイアしたリチャードは前年にキャンピングカーを買ったばかりで、奥さんのナンシーと二人、旅とウィンドサーフィンを楽しんでいるそうだ。ナンシーがポークステーキを焼いてくれて、快適なキャンピングカーの中で夕食と会話を楽しむ。乾燥食品ではない「生きた」食事は、体に染み入るほどに美味しい。そして快活で素敵な二人だった。彼らは庭の野菜がハリネズミに食べられていないか心配なのだが、そのハリネズミがあまりにも可愛くて憎めないそうだ。