2012/05/20

ザ・ケネウィックマン・エクスペディション、49日目


午後十二時五十分に、ノブ一家に見送られて公園の砂浜からコロンビア川へと漕ぎ出した。ワシントン州内陸部で経験した砂漠のような気候とは異なり、おおかた空一面が薄い雲に覆われていて、太陽が覗いたのは二時間ほどだった。日射しの下では長そでシャツ一枚で過ごす。



長大なコロンビア川では、海洋を航行する大型貨物船が太平洋からそのまま進入して、百五十キロメートルほど川を遡行してポートランドへ寄港できる。原子力空母まで航行したことがあるらしい。

全長が三百メートル近いコンテナ船やバラ積み貨物船やはしけ船が川を行き交っていた。その大きさからは想像もつかないほどスピードが速く、また音を立てず静かだ。そのためまるで高層ビルを横倒しにしたような巨体が後方から忍び寄ってきても、その気配にまったく気付くことができない。大型船は急に止まることも曲がることもできず、またカヤックが逃げる速度はとても遅いので、気付かず接近されたときに船の進路上にいたら轢き殺されるだろう。雄大な川を楽しみながらも心の片隅では絶えず警戒し、体を大きく捻ってしばしば後ろを確認しながら漕ぎ進んだ。



昼食はカヤックの上でベーグルを食べた。ベーグルは日持ちが良く嵩張らないので重宝する。



午後七時五十分、低木が茂るだけの小さな島に上陸してテントを張る。七時間漕ぎ続けて、三十五キロメートル進んだ。

夕食にはベーグルとイワシの缶詰を食べた。缶詰は重いので贅沢品である。